実習中、患者さんのFIMを採点して指導者に提出したら、「これ、本当に5点?」と言われた経験はありませんか。自分なりに観察して、マニュアルも読み込んで出した点数なのに、指導者と1〜2点ズレる。修正するたびに、自分の観察眼に自信がなくなっていく——実習期間中、多くの実習生がこの壁にぶつかります。
ズレの原因の多くは、観察力の不足ではなく、FIM特有の「採点のルール」を知らないだけです。この記事では、実習でよく出会う採点の悩みを場面ごとに整理し、症例レポートでも使える「根拠の示し方」までまとめました。
1. なぜ指導者と点数がズレるのか:3つの典型パターン
実習生と指導者の点数差には、再現性のあるパターンがあります。自分のズレがどこに当てはまるかを把握すると、修正の方向性が見えてきます。
| ズレのパターン | 実習生の判断 | 指導者の判断 | 原因 |
|---|---|---|---|
| 「できるADL」で採点 | リハビリ室で見守りで歩けたから5点 | 病棟では腋下介助なので4点以下 | 「しているADL」の原則を見落としている |
| 所要時間の見落とし | 動作自体は自力なので7点 | 通常の3倍以上時間がかかるので6点 | 時間要素が判定に入ることを知らない |
| 接触の有無の誤解 | 軽く触れているだけなので5点 | 接触している時点で4点以下 | 「監視」と「最小介助」の境界の誤認 |
特に多いのが1つ目の「できるADL」と「しているADL」の混同です。リハビリ室での最高パフォーマンスではなく、24時間の生活のなかで実際に行われている動作を採点する——この原則さえ守れば、ズレの半分は防げます。
2. 実習中によくある悩みと、その答え
担当患者を見学だけで採点していいのか
「介助に入っていないのに、点数だけつけていいのか不安です」という声をよく聞きます。FIMは観察評価が基本なので、見学からでも採点は可能です。ただし、以下の3つの情報源を組み合わせることが前提になります。
- 直接観察:実習生自身が見た動作場面
- 看護記録・カルテ情報:夜間や休日の介助量
- 病棟スタッフへの聞き取り:日中と夜間の差、過去1週間の傾向
特に病棟スタッフへの聞き取りは、実習生が遠慮しがちな部分です。「夜間のトイレ移乗はどんな介助になっていますか」と短く具体的に聞けば、ほとんどの場合、丁寧に答えてもらえます。
「日中と夜間で違うとき、どちらを採用するか」が分からない
FIMの大原則として、日中・夜間で能力が異なる場合は、低い方の点数を採用します。これは実習レポートでも頻出の確認ポイントです。
例えば、日中は車椅子へ見守りで移乗できる患者様が、夜間のトイレ移乗では看護師の介助を受けているなら、移乗の点数は夜間の介助量で決まります。「リハビリ室で見たときは自力で行っていたので見守り」と書いてしまうと、ほぼ確実に修正が入ります。
マニュアルを読んでも点数が決まらない
FIMマニュアルは網羅的ですが、実際の臨床場面とのギャップで悩む実習生は多いです。判断に迷ったときは、以下の手順で考えると整理しやすくなります。
- 身体接触があるか(あれば4点以下)
- 接触時の介助量は何%か(25%以下なら4点、50%以下なら3点)
- 接触なしなら、補助具・時間・準備の有無を確認
この順番で確認していけば、迷う場面はほとんど減ります。実習レポートでも、この思考プロセスをそのまま書くと、指導者から「採点の根拠がしっかりしている」と評価されやすくなります。
3. 症例レポートで使える「採点根拠」の書き方
実習で求められる症例レポートには、FIM点数だけでなく、なぜその点数になったかの根拠が必要です。書き方のテンプレートを覚えておくと、毎回ゼロから考えずに済みます。
テンプレート:3行で根拠を示す
【動作】どの動作場面を観察したか
【介助量】どの程度の介助を行ったか
【判定根拠】FIMのどのルールに基づいて何点としたか
記載例:移乗の場合
【動作】病棟での車椅子からトイレへの移乗(朝・昼・夕の3場面を観察)
【介助量】起き上がりは自力だが、立ち上がり時に看護師が腰部に手を添える介助あり。
方向転換と着座は自力で実施。介助量は全体の25%以下。
【判定根拠】身体接触を伴う介助があるため5点(監視)は不適用。
介助量が25%以下のため、4点(最小介助)と判定。
このフォーマットで書くと、指導者は採点の妥当性を確認しやすく、議論の出発点が明確になります。「なんとなく5点」ではなく、「○○のルールに基づいて4点」と書けるようになることが、実習でのFIM評価の大きな目標です。
4. 実習生が陥りがちな採点ミス
補助具使用の見落とし
ベッド柵を使って起き上がっている患者様を「自力でできているから7点」としてしまうケースがあります。補助具や道具を使用している時点で6点が上限です。柵、手すり、移乗ボード、装具、自助具——これらが介在していないかを必ず確認してください。
「準備」を採点に含めない
整容で歯ブラシに歯磨き粉をつけてあげる、更衣で衣服を出してあげる、移乗で車椅子のフットレストを上げてあげる——これらはすべて「準備」の介助に該当し、5点が上限になります。動作そのものが自立していても、準備をスタッフが行っていれば7点や6点はつけられません。
認知項目を「会話の印象」だけで決める
理解・表出・記憶などの認知項目は、雑談の印象だけで採点しがちです。実際には、患者様の生活上の判断や指示の理解度を場面ごとに観察する必要があります。リハビリ中の指示理解、服薬管理、退院後の生活に関する会話など、複数の場面を組み合わせて判定しましょう。
5. 指導者にフィードバックを求めるときのコツ
実習中の限られた時間で、指導者から的確な助言を得るには、質問の仕方を工夫することが有効です。
| 避けたい質問 | 推奨される質問 |
|---|---|
| この点数で合っていますか | 移乗を4点と判定しました。根拠は接触ありの最小介助だったからです。この解釈で合っていますか。 |
| FIMの採点が分かりません | 5点と4点の境界で迷っています。具体的にどの場面を見ればいいですか。 |
| 全部見直してください | 移乗とトイレ動作の点数に自信がないので、ここを重点的に見ていただけますか。 |
「自分はこう考えた」を先に示してから質問すると、指導者は思考プロセスのどこに修正点があるかを指摘しやすくなります。これは社会人になってからも使える、フィードバックを引き出すスキルです。
6. まとめ
実習中のFIM評価は、点数を当てに行く作業ではなく、「採点の根拠を言語化する練習」です。指導者と点数がズレたら、それは観察力が足りないのではなく、FIMのルールのどこかを知らなかっただけ。修正のたびに、評価の精度は確実に上がっていきます。
「しているADLで見る」「日中と夜間は低い方を採用」「接触したら4点以下」「補助具使用は6点まで」——この4つを最初に押さえておけば、実習中の採点で大きく外すことはありません。
実習で出会う一人ひとりの患者様が、評価者としての引き出しを増やしてくれます。点数が合わなくて落ち込む日もありますが、それは確実に経験値になっています。明日の実習でも、自分なりの根拠を持って採点に臨んでみてください。
