排尿管理は、FIMの中でも「点数の根拠を説明してください」と聞かれたときに一番言葉に詰まりやすい項目かもしれません。
失禁の頻度だけを見れば単純なのですが、そこにウロバッグ、留置カテーテル、間欠導尿、抗コリン薬といった「器具・薬剤の管理」という軸が絡んでくるため、「失敗はゼロなのに介助が必要」「介助はほぼないのに失敗がある」というねじれたケースが頻繁に起こります。この記事では、そのねじれをどう整理すればいいかを、実際の病棟でありそうな場面に沿って解説していきます。
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採点の基本ルールは総合ガイド参照
排尿管理も、他のFIM項目と同じく「管理の介助量」と「失敗の頻度」のうち低い方を採用する、という基本構造は共通です。7点・6点・5点をどう切り分けるか(道具や薬剤を使っているかどうか/誰の手が実際に動いたか)、失敗としてカウントするもの・しないものの基準といった一般ルールは、FIM「排泄管理」の採点基準で詳しく解説しているので、まずはそちらを読んでおくと以降の話がスムーズです。
ここから先は、その基本ルールを排尿管理の実際の場面に当てはめたときに、具体的にどう判断すればいいかという「各論」に絞って解説します。
ウロバッグ・カテーテル・薬剤、それぞれの判定ポイント
排尿管理で判断に迷うのは、たいてい次のどれかの器具・薬剤が絡んでいるケースです。それぞれ、どこまでが6点で、どこから5点に落ちるのかを具体的に見ていきます。
ウロバッグ 尿の廃棄、バッグの位置調整、装着感の確認まで本人が行っていれば6点。廃棄だけでもスタッフが行っていれば、その時点で5点が上限になります。「バッグの存在を理解している」「捨て方を知っている」という理解度は判定に関係なく、実際にその工程で誰の手が動いたかだけを見てください。
留置カテーテル ウロバッグと同様、尿破棄・バッグ交換・カテーテル周囲の清潔管理まで本人が完結していれば6点。これらの管理を看護師が行っている場合は5点以下になり、多くの急性期病棟では実質1点(全介助)として扱われるケースが大半です。
間欠導尿(自己導尿) 「タイミングの判断」「セットの準備・開封」「実施」「後始末」という4つの工程に分けて考えると評価しやすくなります。すべて本人が行っていれば6点ですが、病棟の運用でセットの準備だけ看護師が担当している、というケースは珍しくありません。この場合、手技自体は完璧でも、準備の工程に他者の手が入っている以上5点にとどまります。「手技は問題ない」という情報だけで6点と判断しないよう注意してください。
抗コリン薬などの内服管理 薬の服用そのものを本人が管理できていれば6点。ただし、過去7日間の実績を反映するのが原則なので、薬の効果が出てすぐに点数を上げるのではなく、その状態が安定して継続していることを確認してから見直すのが安全です。
排尿管理ならではの2つの落とし穴
夜間だけオムツを使っている場合
昼間はトイレで完全に自立していても、夜間だけ念のためオムツを使用し、それをスタッフが交換・廃棄している場合は、その交換作業自体が管理の介助にあたるため、点数は最高でも5点になります。逆に、夜間の対応まで本人が自己完結できているなら6点・7点も十分あり得ます。「失禁したかどうか」ではなく「オムツという器具の後始末に他者の手が入ったかどうか」で見る点を忘れないでください。
スケジュール排尿を導入しているケース
決まった時間にトイレへ誘導することで失禁がなくなった場合でも、スタッフの声かけ・誘導が継続的に必要な状態は「監視」の介助が入っているとみなされ、5点が上限です。声かけなしで本人が時間を意識してトイレに行けるようになって初めて、6点以上を検討できます。
現場でよくある質問
Q. 尿意はしっかり訴えられるのに、動作が間に合わず失禁してしまう患者さんはどう評価しますか?
排尿管理の評価では「なぜ失禁したか」という原因は問いません。結果として失禁が起きた回数だけを数えます。動作が間に合わなかったことによる失禁も、通常の失禁と同様にカウントしてください。ただし、その原因が「移乗やズボン操作の遅れ」であれば、トイレ動作側の点数改善で解決できる可能性がある、という視点は臨床上とても重要です。
Q. 日中は自己導尿が完全自立、夜間だけ看護師が対応している場合、点数はどう考えますか?
時間帯によって介助量が違う場合も、1日単位・1週間単位でならして1つの点数をつけます。「日中は6点相当、夜間は5点相当」というように部分的に分けて記録するのではなく、実際の介助量の割合に応じて4点以下の表に当てはめるのが基本です。たとえば夜間の1回だけ看護師が対応しているなら、全体に占めるその介助の割合を目安に3〜4点あたりを検討することになります。判断に迷う場合は、直近1週間の実績を時間帯ごとに書き出してから割合を計算すると根拠を示しやすくなります。
まとめ
排尿管理で迷ったときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 器具・薬剤を使っているかどうか(7点か6点か)
- 使っている場合、その工程に他者の手が入っているかどうか(6点か5点か)
- 管理の介助量と失禁の頻度、どちらか低い方を採用する(4点以下)
「本人がどれだけ理解し協力できているか」ではなく「実際に誰の手が動いたか」で判断する、という原則さえ押さえておけば、カンファレンスでも根拠を持って点数を説明できるはずです。

