リハビリテーションの現場において、FIM(機能的自立度評価)の「排尿管理」は、患者様の尊厳とQOLに直結する非常にデリケートかつ重要な項目です。しかし、評価対象が「失敗(失禁)の頻度」と「器具(尿器やオムツ、カテーテル)の使用」という2つの側面を併せ持つため、算出方法で迷うことが少なくありません。
特に、「夜間だけオムツを使っている場合は?」「カテーテル管理をスタッフがしている時の点数は?」といった疑問は、日常的に発生します。FIMはあくまで「24時間の生活の中で実際に行っている活動」を評価する指標です。
今回は、FIMの公式ルールに基づき、排尿管理項目の正しい評価方法と、現場での迷いどころを解消するための視点を詳しく解説します。
Contents
1. 排尿管理評価の「2つの指標」
FIMの排尿管理は、以下の2つの要素のうち、「点数の低い方」を採用するという原則があります。
- 管理のレベル(器具の使用): 排尿をコントロールするための器具(オムツ、尿器、カテーテル、集尿バッグなど)を、自分自身で管理できているかどうか。
- 排尿の成功(失禁の頻度): 過去7日間において、どの程度の頻度で不随意な排尿(失禁)があったか。
2. 採点基準の早見表(6点〜5点の境界線)
現場で最も判断が分かれやすいのが、器具を使用している場合の5点(準備・監視)と6点(修正自立)の境界線です。
| 状況 | 判定 | 理由・条件 |
| 器具を使用し、完全自力 | 6点 | オムツの着脱、ウロバッグの破棄、カテーテル洗浄等を一人で完結している場合。 |
| 内服薬(抗コリン薬等)の使用 | 6点 | 排尿コントロールのために薬を服用しているが、失禁がない場合。 |
| 物品の準備・後始末 | 5点 | オムツの用意、尿器の洗浄、バッグの空け作業をスタッフが行う場合。 |
| 監視・促し | 5点 | トイレのタイミングを促す(スケジュール排尿)、失敗がないか確認する。 |
| 最小介助(身体接触) | 4点 | オムツ交換時の体位変換の介助や、カテーテル挿入の一部を手伝う場合。 |
3. 器具管理の介助量による採点
排尿をコントロールするための器具を使用している場合の点数は、その介助量で決まります。
- すべて自力で管理(100%): 6点
- 物品の準備・後始末のみ介助: 5点(準備)
- 75〜99%自力で管理: 4点(最小介助)
- 50〜74%自力で管理: 3点(中等度介助)
- 25〜49%自力で管理: 2点(最大介助)
- 25%未満: 1点(全介助)
4. 失禁の頻度による採点
失禁がある場合の点数は、その頻度で決まります。
- 失禁なし(100%成功): 7点(器具なし)または 6点(器具あり)
- 月に1回未満: 5点(見守り)
- 週に1回未満: 4点(最小介助)
- 日に1回未満: 3点(中等度介助)
- 毎日: 2点(最大介助)
- 常に: 1点(全介助)
5. 臨床的観察ポイント
「夜間のみオムツ」の扱いは?
頻出する質問です。昼間はトイレで自立していても、夜間だけ念のためにオムツを使用し、かつスタッフがそのオムツを交換(破棄)している場合、器具の使用に関わる「管理」の部分で介助が発生しているため、点数は最高でも5点となります。
自己導尿の評価
自己導尿を本人が一人で行い、準備や後始末も自立していれば6点です。しかし、病院のルールで「導尿の準備(セットの開封)」を看護師が行っている場合、それは準備の介助となり5点となります。
「トイレ動作」との切り分け
排尿管理はあくまで「括約筋のコントロールと器具の扱い」を評価します。トイレでの「ズボンの上げ下げ」や「お尻を拭く動作」は、別の項目である「トイレ動作」で評価します。排尿管理の点数が低くても、トイレ動作は自立している、というケースは十分にあり得ます。
5. チームアプローチ提案:自立に向けた介入
排尿管理の自立は、患者様の社会参加において最も大きなハードルの一つです。
- 看護師との連携(排泄記録の分析): 失禁のタイミングを分析し、「スケジュール排尿」を導入することで、5点(監視)の状態を作り出し、失禁による点数低下を防ぎます。
- 環境設定と器具の選定: ウロバッグのコック操作が難しい場合は、操作しやすいタイプのコックへ変更したり、固定方法を工夫したりすることで、5点から6点(修正自立)への改善を検討します。
- 薬剤の効果確認: 医師と相談し、薬剤調整によって失禁頻度が減った場合、速やかに点数に反映させ、ADLの向上として可視化します。
6. まとめ
排尿管理の評価は、「器具の管理」と「失禁の頻度」の低い方を採用するというシンプルなルールに基づいていますが、その内訳には非常に多くの臨床的判断が含まれています。
「準備とは何か」「器具とは何を指すか」を正しく理解することで、スタッフ間での評価のバラつきを抑えることができます。数字を正しくつけることは、患者様が「安心して外出し、社会に戻る」ための具体的な課題を明確にすることに繋がります。明日からの病棟カンファレンスでは、ぜひ「器具管理のどの工程に介助が必要か」を具体的に議論してみてください。

