FIM「排泄管理」の採点基準|失敗の数え方から特殊ケースまで臨床目線で解説

excertion FIM判定基準

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FIMの採点で「排泄管理」が出てくると、手が止まる人は多いのではないでしょうか。

「週2回の失禁って何点になるんだっけ」「坐薬は看護師が入れてるけど、本人が自分で言えてるから自立でいい?」——こうした迷いは、経験年数に関係なく起こります。むしろベテランほど、施設ごとの慣習や過去の自己流ルールが染みついていて、原則に立ち返ったときに「あれ、これで合ってたっけ」となることも珍しくありません。

この記事では、排泄管理の採点でつまずきやすいポイントを、実際の臨床場面に近い形で整理しました。学生や新人の方はもちろん、「今まで何となくで採点していた」という方にも、採点根拠を説明できるレベルまで理解を深めてもらえる内容を目指しています。


採点を決める2つの軸

排泄管理の点数は、次の2つの視点のうち低い方を採用します。

  1. 介助量:カテーテル管理、パウチ交換、後始末などにどれだけ他者の手が必要か
  2. 失敗の頻度:過去7日間で、どのくらいの頻度で失禁(漏れ)があったか

ここで注意したいのは、FIMが評価しているのは「トイレでうまく排泄できる能力」ではなく、「実際に病棟生活の中で何が起きているか」という点です。リハビリ室では自立して動作できていても、夜間や病棟では看護師がオムツ交換をしている、あるいは尿意を伝えられず失禁しているという状況があれば、その”している状況”が点数に反映されます。

リハスタッフが訓練場面だけを見て高めに点数をつけてしまい、病棟の看護記録と食い違う、というのはよくある失敗パターンです。採点前に一度、看護師や介護スタッフに直近1週間の状況を確認する習慣をつけると精度が上がります。


7段階のスコア表と、それぞれの境界線

点数判定基準
7点完全自立。失敗なし、介助・道具の管理も一切不要
6点失敗はないが、坐薬・内服薬・カテーテルなどの自己管理に道具や時間がかかる(修正自立)
5点月1回未満の失敗、または準備・後始末に監視や声かけ程度の介助が必要
4点週1回未満の失敗、または介助量が全体の75%以上を自分で行える
3点週1回以上・1日1回未満の失敗、または介助量が50%以上75%未満
2点1日1回以上の失敗が常態化、または介助量が25%以上50%未満
1点ほぼ常に失禁している、または介助量が25%未満(ほぼ全介助)

数字だけを覚えるより、以下の3つの境界線で理解しておくと現場で判断しやすくなります。

7点と6点の境界:「道具・薬剤を使っているか」で見る

失敗がないという点はどちらも同じですが、判定の分かれ目は介助者の有無ではなく「排泄コントロールのために何らかの道具・薬剤を使っているかどうか」です。

  • 内服薬でコントロールしている(下剤・整腸剤など)
  • 坐薬を使用している
  • パッドや装具を装着している
  • 導尿カテーテルを自己管理している

これらはすべて、本人が単独で行っていても6点(修正自立)になります。何も使わず、自然な排泄で完全にコントロールできている状態だけが7点です。「自分でやっているかどうか」は次の6点と5点の境界の話であり、7点と6点の間では関係ありません。

6点と5点の境界:「誰かの手が入るかどうか」

ここが実務上いちばん揉めるポイントです。判断材料はシンプルで、「本人以外の誰かが物理的に手を出したかどうか」だけを見ます。

  • 看護師が坐薬を挿入した → 5点(本人がどれだけ協力的でも、他者の手が入った時点で自立ではない)
  • 本人が坐薬を自分で挿入した → 6点
  • 失敗はゼロだが、ポータブルトイレの後始末は介護士がしている → 5点

「本人はきちんと訴えられていた」「協力動作はできていた」という事情は、この2点の判定には影響しません。あくまで「実際に誰の手が動いたか」で見る、という原則を覚えておくと迷いが減ります。

4点以下:頻度か介助量、どちらか低い方

4点以下になると「失敗の頻度」と「介助量のパーセンテージ」の2つの表現が混在してきます。どちらの基準で見ても構いませんが、両方に該当する場合は必ず低い方の点数を採用するのがルールです。たとえば失敗頻度だけ見ると4点相当でも、介助量が50%程度必要であれば3点になります。


「失敗」としてカウントするもの・しないもの

失敗の頻度を数えるとき、何を「失敗」に含めるかで迷う場面があります。

カウントするもの

  • 衣服やシーツを汚してしまった尿・便失禁
  • パッドから漏れて交換が必要になったケース
  • 尿意・便意を伝えられず、結果的にオムツ内で排泄した状況(本人に能力があるかどうかは問わない)

カウントしないもの

  • 予防的に使用しているパッドに、ごく少量の付着があった程度(実質的な失敗とは言えないレベル)
  • 医療的処置として計画的に行っている摘便やカテーテル管理(これは失敗ではなく「介助量」の軸で評価する)

ここで注意したいのは、「失敗の回数」と「オムツを使っているかどうか」はイコールではないという点です。予防的にパッドを着用しているだけで、実際には失敗が起きていない患者さんを、パッド使用だけを理由に減点してしまうケースをよく見かけます。あくまで「実際に漏れた・汚れた」という事実があったかどうかで判定してください。


介助量の判定:準備・後始末・全介助の線引き

介助量の軸で評価する場合、次の3段階で考えると整理しやすくなります。

  1. 準備のみ:パッドや衣類を近くに用意する、ポータブルトイレをセッティングするなど。実際の排泄行為には手を出していない
  2. 部分的な後始末:清拭やパウチ内容物の廃棄など、一部の工程だけ手伝う
  3. 全面的な介助:オムツ交換や体位変換を含め、ほぼすべての工程に介助が必要

「準備だけ手伝った」場合は5点相当、後始末の一部を手伝った場合は失敗の有無や介助量の割合に応じて4点〜2点、常時オムツ交換などフルで介助している場合は1〜2点、という形で対応づけて考えると、表とのすり合わせがしやすくなります。


排泄管理とトイレ動作は混同しやすい

新人がもっとも間違えやすいのが、この2項目の切り分けです。

  • 排泄管理:尿や便のコントロールそのもの(薬剤管理、失敗の有無、後始末)
  • トイレ動作:ズボンの上げ下げ、殿部の清拭、便座への移乗といった一連の動作

「お尻を拭く動作に介助が必要」なケースでは、点数が下がるのは「トイレ動作」の方であって、排泄そのものに失敗がなければ「排泄管理」は下がりません。逆に「動作は完全自立だが、尿意がわからず失禁してしまう」患者さんは、トイレ動作は満点でも排泄管理は低くなる、という逆のパターンもあります。

この2つを1つの感覚で採点してしまうと、実際の介護量とFIM合計点にズレが生じ、退院時のケアプランにも影響が出るので注意してください。


排便まわりの各論は専門記事へ

摘便・坐薬・下剤の管理、人工肛門(消化管ストーマ)の評価など、排便管理特有の判断ポイントはFIM排便管理の採点基準にまとめています。排尿まわりの器具管理(間欠導尿・留置カテーテルなど)はFIM排尿管理の完全ガイドを参照してください。


現場でよくある質問(FAQ)

Q. 入院してまだ数日で、過去7日間のデータがありません。どう採点すればいいですか?

FIMは本来「直近7日間の実績」を見る評価法ですが、入院直後などデータが不足する場合は、その時点までの状況から予測される頻度で暫定的に採点し、1週間経過後に見直すのが一般的な運用です。施設によって暫定評価のルールが定められていることもあるので、所属先の運用に従ってください。

Q. 夜間だけ念のためオムツを着用している患者さんは、それだけで減点されますか?

されません。前述の通り、判定基準は「実際に失敗(漏れ)があったかどうか」です。予防的な着用のみで実際の失禁がなければ、7点や6点になり得ます。

Q. 認知症があり、尿意の訴えが曖昧な患者さんはどう考えればいいですか?

「尿意を正確に訴えられるかどうか」自体は直接の採点基準ではありません。あくまで結果として失敗が起きているか、後始末に介助が必要かで判断します。ただし認知面の問題で誘導排泄が必要になっているケースでは、その誘導・声かけの頻度が「介助」に該当するかどうかを個別に検討する必要があります。

Q. 排尿と排便で介助量が大きく違う場合、無理に1つの点数にまとめるべきですか?

いいえ。排尿管理と排便管理は別項目として扱うのが原則なので、まとめず、それぞれ独立して採点してください。排尿管理については器具(ウロバッグ・カテーテル)まわりの採点だけをさらに詳しく知りたい方向けに、FIM排尿管理の完全ガイドで個別に解説しています。


まとめ

排泄管理の採点で迷ったときは、次の3つを順番に確認してみてください。

  1. 排尿と排便、それぞれ別に考えているか
  2. 「誰の手が実際に動いたか」で6点と5点を切り分けられているか
  3. 「失敗の頻度」と「介助量」、低い方を採用しているか

この3点さえ押さえておけば、現場での判断に大きくブレることはなくなるはずです。