FIM(機能的自立度評価法)の認知項目の中で、「社会的交流」と並んで点数が揺れやすいのが「問題解決」です。
「お金の計算は完璧だけど、リハビリの時間を忘れてしまう」
「病状の説明は理解しているようだけど、立ち上がりの際にブレーキを忘れて危ない」
こうしたケースで、あなたは何点とつけていますか?
この記事では、理学療法士としての臨床経験をもとに、「複雑な問題」と「日常の問題」の定義、そして現場でも迷う「見守り(5点)」と「最小介助(4点)」の境界線について深掘りします。
1. 「問題解決」で評価しているのは「生活の対応力」
この項目では、単なる知能テストのような能力ではなく、生活の中でトラブルが起きたときに、適切に判断し、解決できるかを評価します。
具体的には、以下の3つの要素を総合的に判断します。
- 意思決定: 自分にとって適切な選択ができるか。
- 安全管理: 危険を予測し、回避できるか。
- 計画性: 複数のステップがある作業(退院準備など)を段取りできるか。
2. 【重要】「複雑」と「日常」の境界線を整理
FIMでは、まず「複雑な問題」ができるかどうかで、6・7点グループか、それ以下かが決まります。
| カテゴリー | 評価の具体例(ここがポイント!) |
| 複雑な問題 | 金銭管理(お釣りや予算)、退院後の家事の段取り、福祉用具の選定、自身の病状の理解とそれに基づいた行動。 |
| 日常の問題 | 食事をこぼした時の対処、失禁した時の報告、車椅子の安全な操作(ブレーキ等)、体調不良をスタッフに伝える。 |
臨床の知恵:
「退院の話が噛み合わない」のは複雑な問題の低下ですが、「点滴を自分で抜こうとする」「ナースコールを押さずに転倒リスクのある行動をとる」のは、日常の問題における安全管理の欠如であり、より低い点数(1〜4点)の検討材料になります。
3. 実践!点数判断のフローチャート
後輩や学生さんに「これって何点?」と聞かれたときに、私がいつも伝えている目安です。
| 点数 | 判定の目安(現場での捉え方) |
| 7点 | 完全自立。 複雑な問題も、誰の助けも借りず、安全に解決できる。 |
| 6点 | 修正自立。 複雑な問題も解決できるが、通常より時間がかかる、あるいは慎重になりすぎて行動が遅い。 |
| 5点 | 監視・準備(5点の壁)。 日常の問題(安全管理等)なら100%自力で解決できる。 ただし、不慣れな環境やストレス下では「見守り」が必要。 |
| 4点 | 最小介助。 日常的な判断でも、時々(25%未満)「危ない!」「待ってくださいね」といった声掛け(介助)が必要。 |
| 3点 | 中等度介助。 日常的なトラブルに対し、半分くらい(50〜74%)はスタッフの助言や誘導が必要。 |
4. 専門家の視点:迷った時の「必勝判断ガイド」
Q. 「ブレーキの忘れ」をどう評価する?
私が後輩や学生さんに伝えているのは、「本人が自力で気づけるかどうか」です。
- 動き出した瞬間に「あ、ブレーキ忘れてた」と自分で止まってかけ直せるなら5点。
- スタッフが「ブレーキは?」と言わないと気づかない、あるいは言われてもかけない場合は4点以下です。
Q. 「指示に従える」のは問題解決ができる証拠?
いいえ。指示に従えるのは「理解」の能力です。問題解決は、「自分で判断して行動を変える」能動的なプロセスを評価します。指示待ちでしか安全が保てない場合は、自立度は低いとみなすべきです。
5. まとめ:客観的な評価が「退院支援」を支える
問題解決の点数は、そのまま「退院後の独歩が可能か」「一人暮らしができるか」の判断基準に直結します。だからこそ、病棟スタッフ全員で「安全管理の不備」をカウントし、共通の物差しを持つことが不可欠です。
「どうしてもパーセンテージ(%)の判断が難しくて、カンファレンスで言い切れない…」
そんな悩みを持つ方のために、【FIM自動判定ツール】を開発しました。
日々のリハビリの中で目にする「具体的な行動」をチェックするだけで、マニュアルに基づいた正確なスコアが導き出されます。ぜひ、あなたの臨床のパートナーとして活用してください。
あわせて読みたい:FIM「社会的交流」の採点基準を具体例で解説!5点の境界線は?

